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争いでは常に有利にたてるのだから、戦士としては上出来なのだろうが。
「必要があれば、ボクは【何度でも】君の大切な人を、壊すよ」
だからこそ【原作】は追い詰める。
できるのは【救済】を与えることではない。【絶望】を与える、それだけ。
「っ…………! うるさい、生布に、なにを……するつもり! この、ひきょうもの……!」
それが戦いというものだ。
騙し、騙され。そんな命の駆け引きをするのが戦場。
優秀とはいえ、やはり彼女も言い換えればただのグリムリーバー。自らが極致に追い込まれれば、理不尽な罵倒も生まれる。
卑怯な騙し合いこそが、戦いと知っているのに。
生布に駆け寄りたいが、かといって【原作】を放置するわけにもいかない。そんな動揺を完全に表に出した絶花が、唇を噛み締めながら睨み付けてくる。
もう普段の余裕な姿など一欠片もない。
「選択して。このまま虚村神室を諦めて消えるか、それとも二人とも死んで終わるか」
言い返せないのか、それとも怒りでなにも言えないのか。絶花は黙りこんだままただ無言で睨み付けてきた。勝てないとは分かっているけど、それでも抵抗せずには居られない、そんな様子だった。だが、その抵抗を許すわけには行かない。
「……、死ぬ?」
「…………………………………!」
【原作】の問いかけに、絶花は答えない。その沈黙は先ほどまでの反抗的な態度ではなく、本物の怯えから来ているものだ。
けれど緩めない。
冷酷に。
冷淡に。
無慈悲に。
残酷に。
残虐に。
彼女の家族を皆殺しにした、あの夜のように、【原作】の双眸は、絶花を追い詰める。
沈黙は長くはなかった。段々と火花を強くしたところ、絶花は恐怖で根をあげた。
先ほどまで優位にたっていた立場とは思えないくらいにガタガタと震えながら、絶花は今にも泣きそうな顔で口を開く。
「か、かえ……きゃぁっ!?」
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