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かくして幕は開かれた。
あの時私が結局どちらを選んだのか、悪夢は最後まで見させてくれない。ただ途中で終わる未完成の壊れたシアターを、延々上映するだけ。
けれど私は私を信じてみせる。間違った方を選んでいないと。
たった一人、孤独に苛まれながら。縫い繋がれ、ピンで繋がれただけの心臓は脆く感情を流していく。
「一人ぼっちは、もう嫌だよ……」
罪は私を追ってくる。
◆◆◆
科学が栄え、非・現実的なオカルトなど笑い飛ばされる現代。
日本某県、柩見村。現代から取り残された何の変鉄もない寂れた村。その村が、魔女の毒に蝕まれようとしていた。
◆◆◆
悪夢は、いつも同じところで姿を消す。まるで、その先のフィルムが鋏で切り落とされてしまったかのごとく。そして、悪夢が消えたその後に残るのは。
「ぅわぁああああッ!!」
叫んだ自分の声で、目が覚めた。
一気に覚醒したその意識は、自分がどこにおかれているのかをすぐには理解できなかった。だが、しばらくして状況を理解する。
冷たいフローリング、積み重なる物の山、そしてその中で一人体を抱え込んで横たわっている私。
ベッドが無い、のではない。私が悪夢を見て暴れて、床に転がり落ちてしまったのだ。その証拠に、タオルケットが全身に絡みついている。しかも、かなり複雑に。
「……ぁ……ゆ、夢……か」
悪夢と現実、その境を理解するには、それからしばらく時間がかかった。
段々と現実に重心をおけるようになった少女は、床に這うほど長い髪を引きずって、起き上がる。眠っていただけだというのに、その心臓はばくばくと激しい動悸を繰り返し、服や髪が張り付いてしまうほど全身は汗ばんでいる。
「う、寒……」
部屋の中にある小窓から、緩く風が吹き込んでいた。普段ならそこまで気になるような風ではないが、全身がびしょ濡れな今、そんな僅かな物でさえ寒さを引き立てる物。
もう、夏に入ったというのに。こんな日に限って、朝寒いとは……。
曇りのせいで太陽がよく見えない空を、小窓という名の枠を通して見ながらも、少女は立ち上がる。窓を閉める為だ。
だが。
「っん? たっ!!」
少女の足が、床に転がっている【何か】に引っかかった。
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