13人が本棚に入れています
本棚に追加
月が霞む雲の下。時計の短針が午前一時を指す時間に荒々しいリズムを刻む足音。
――カツカツとヒールの音がやけに強く響く。美貌と抜群のスタイルをより美しく魅せる葵色ドレスの女性は、走り抜ける。
力強き走りにより、シルクの様に極め細かい金髪がキラキラ光り腰まである髪は後方に靡き綺麗と言える。
何処までも走り続ける彼女は――ついに追い掛けし者を追い詰める。
目の前は行き止まり。建物と建物の隔てる白き壁が今は彼女の味方。
「……観念しなさい」
金髪の彼女は、追い詰めた真っ赤な髪色の女性に右手に持つ拳銃を向け、撃鉄をカチッと親指で押すと弾倉が応え回る。
フフフッと笑みを見せる真っ赤な髪の女性。黒色のワンピースを着ており、その整った顔立ちに大きな丸い眼鏡。瞳の色は漆黒をどこまでも好む黒。
「よく私を追い詰めたわね?」
「――違いないわ。よくやく、ようやくこの時が来た」
「フフフッ、あんな小さな貴女がここまで美人に成長するなんて素晴らしいわ」
「誉め言葉有り難く頂くわ。さあ、懺悔の時間は終わりよ? さようなら」
乾いたつまらない音がパンと響くと銃口から紫煙があがり、火薬の匂いで満たされる。
最初のコメントを投稿しよう!