満月

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「――!?」  その撃鉄が打ち付け放った銃弾は――先程まで女の身体で見えなかった白き壁を撃ちつけていた。 「……惜しいとだけ言っておきましょうか」  姿が見えないが確かに響くその声。それは先程の赤き髪の女の声である。 「――くっ! 何処よ?! 出てきなさい!!」  拳銃を構え左右を見渡しつつ、警戒を強める。五感をフルに活用させ、次の一撃に神経を尖らす。 「残念ね。本当の魔女を相手にするには些か準備がなってないわよ? 今日は久しい再開と貴女の成長を祝して見逃すわ。では、また生きてらお会いしましょうか」 「待って! 何処?!」  声を張り上げ叫ぶが、その返事は返って来ることは無かった。  だが、彼女はその拳銃を握り締めて気を抜かない。  ……そんな時間も秒針が半回転もすれば無駄だと思い、ゆっくり腕を下ろす。 「逃がした……」  やっとその状況を把握すると身体の筋肉をほぐすように溜め息を一つ。  不意に空を見上げる。奇しくもあの日と同じ綺麗な満月に……あの女に出会った。  そして、今日もその魔女に出会ったのが満月の夜。自分の存在を現す名前にも月と言う言葉が入る。  自分は月に縁があるのかと自負しながらも、相棒の拳銃をフォルダーに納めた。 「……詰めが甘かったか」  瞳を細め自分の失態に小さく舌打ちをし、そのスレンダーな白き足を来た道を戻りながら思うのは一つ……次こそ仕留めてやると。
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