歯車

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 イライラとしながら黒スーツ姿の男がポケットに両手を突っ込み、革靴を鳴らし歩く。  アスファルトの上で響く靴の音はビルと言われる街中の建物に反響する。  さすがにこの深夜にもなれば人通りも少なくなる駅前である。平日であれば尚更だと思いつつも、苛々は解消される訳では無い。  青年の名は笠原椋斗(カサハラリョウト)年齢は十九歳。身長は比較的高く百八十センチあり、モデルのようにスラッとした体型。黒髪でやや短めの髪型。  一見すれば何処かのモデルかと見間違う程の容姿だが現在ただのフリーター。  今日も会社面接の手応えの無さに酒を呑んだ帰り道である。  なんでこの世界の企業ら自分を認めないのさっぱり納得が行かない。高望みしている訳では無いのに、就職希望先ではことごとく拒まれる。  確かに学歴は威張れるものでは無い。だけど、社会は履歴、実績……人間性を見ようとしない。  オカシイ話だ。久方ぶりに悔しくてムカッと来くれば、アスファルトに転がる空き缶をカコーンと蹴り飛ばす。  ……でも、気分が晴れる訳では無い。  ――くそ。  この世界はノスラダムスの大予言なるものが的中し、世界が変わった。  あの日、この世界に変化が起きる。それは異世界の住人が突如現れたのだ。  魔人なる人種が日本に現れ世界を変えた。胡散臭い話だが、魔人は夢物語だと思われる平行世界の魔法が存在する世界崩壊に伴い世界を飛び越えて来たと言う。  胡散臭い話も現実に魔法と言われ超常現象を目の前に出されれば、信じる他無いのが人間だ。  魔人の存在は最初は戸惑う者が多く、日本政府も黙っていない。慎重に対応を取り、話し合いをする。  結果、一時戦闘する結果になるが……此方の軍事力と軍事武器は全く歯が立たなかった。魔人が使う魔法は、大地を揺らし空気を焦がす。  銃器の弾丸など容易く止められ届く事が無い。そんな中、日本の自衛隊や世界の軍事では対抗する術が無かったのが虚しい現実であった。
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