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講堂内とその周囲が、凄まじい熱気に包まれていく。
内部はまるでサウナのように、蒸し風呂の中に入れられたような、絡みつく暑さが皆を襲う。
「これはマズイな・・・」
不意にテセウスが辺りを見渡してつぶやき、大量の汗を拭う。
「どこ見てんだ?」
すかさずキースがテセウスの背後に詰め寄るが、
「俺の出番は無しか・・・逃げよ」
突き出された拳をかわし、出口に向かって走る。
だが、
「この包囲網を簡単に突破できると思うなよ?」
放が前に立ち塞がり、斥力による攻撃を見舞う。
「うお!?」
横に飛んでそれをかわし、すぐに体勢を整えるテセウスに、
「いけオラ!」
血の猟犬が迫る。
「くそが!」
避けられないと判断した彼は能力を発動。
床を殴りつけ、その周囲を大きく陥没させる。
すると、穴の前に壁が立ち上がり、猟犬の突進を防いだ。
その衝撃で壁は大破したものの、テセウスはその場から脱出。
包囲網から離れ、皆の位置から距離をとった。
「あの能力は・・・」
バーナードは眉を潜め、テセウスの力に不審を抱く。
かつて、アルカディアとの戦争の際に、彼と同じ力を使う男がいたのだ。
“造力三人衆”の一人、
リンク・ファインズ。
だが、非能力者に力を与える造力技術をアルカディアに提供したのが、元セラフィムの一員であるヘンリーだと考えると、つじつまが合わなくもない。
ヘンリーとエリュシオンが繋がっているとは思えないが、今は無理矢理、納得するようにした。
「とりあえず避難だ。講堂の外へ出る」
バーナードが皆にそう指示した直後、講堂の入口付近に散らばった鉄屑が、激しい炎に包まれた。
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