開催

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しかし、何も見えない。 いつしか場は静寂に包まれ、木々が燃える音だけが淡々と聞こえていた。 「ククククク・・・哀れな子羊が、噛まれることを恐れて棒立ちか」 不意に、響き渡るタナトスの声。 低くかすれた、嫌悪感を覚える特徴的な声だ。 「姿を見せろ腰抜け!」 キースは辺りに向かい、挑発を飛ばす。 皆はそれに乗じて、警戒を強めていく。 「聴こえるぞ?お前達の、死の声が・・・恐怖に怯え、震える吐息が」 すると、パーシー、マルス、バーナードの三人が同じ場所に目をやる。 そこには刀を構える放。 否、その横に立つタナトスだ。 「くッ・・・!」 とっさに刀を振りかざす放だが、 「フン」 紫色の波動を受け、大きく後方へ弾き飛ばされる。 「放!」 炎の林に姿を消した放を、功刀が追う。 「久しぶりにやるか・・・冥界の鎮魂曲(レクイエム)」 タナトスの背後、その頭上に、瑠璃色に煌めく霧が収束していく。 そして現れたのは、死神。 巨大なそれは上半身のみで、鋭い鎌を持ち、タナトスの背後に静止していた。 「と、頭領の力と同じ・・・いや、それ以上に不気味だ」 ブラジル政府の捜査官であるペドロは、ウェズレイの赤い魔人を脳裏に浮かべてそうつぶやいた。 「ショータイムといこうか」 ヒラヒラした服の中から体を出さないタナトスは、マリアンを見て唇を舐める。 そして、彼の背後で静止していた巨大な死神が、鎌を振り上げて彼女に迫る。 「マズイ!」 「避けろ!」 キースと地道の呼び掛けも虚しく、マリアンは放心状態。 そこに、巨大な瑠璃色の刃が振り下ろされた。
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