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「ここまで来れば、ひとまずは大丈夫か・・・」
炎が消えた逃げ道を使い、講堂付近から脱出したバーナードは、肩越しに後ろを見てそうつぶやく。
まだ後方から戦闘音が鳴り響くが、ゼルを始めとする護衛達が全滅しない限りタナトスは追ってこれないだろう。
が、この逃げ道が罠であった場合のことを考えれば、安心はできない。
「すぐに本部へ連絡して、救援を呼ぶ。周囲を見張ってくれ」
バーナードはそう言い、電話を取り出す。
ロン、地道、功刀の三人は周囲を警戒。
バーナードと共にゆっくり林を進みながら、能力発動の準備をする。
「罠では、ないのかもな」
ふと地道が口を開き、護衛の功刀に目で合図する。
二人のエリュシオンが講堂にいる以上、罠だとしても突破できる自信が、彼にはあった。
地道の憶測では、逃げ道を使った四人に攻撃するのは残っているアイギス達。
しかし、講堂でも見た彼らの力は知れている。
結構な数で襲われたとしても、ロンや功刀で対応できるほどの強さなのだ。
「支部に連絡を入れるか。できるだけ早く応援が必要だ」
開催がバレないようにする為の少数策は、完全に裏目に出た。
そのことを噛み締めながら、バーナードは震える指で電話を操作する。
と、その時・・・・・・
「危ない署長!」
危険を察知したロンがバーナードを突き飛ばし、共にその場へ倒れ込む。
同時にそこへ落ちる電話は、真っ二つに両断されていた。
「何者だ?」
地道が尋ね、攻撃が飛んできた方向を見る。
するとそこには、一人の男が立っていた。
腰まで届く、長い黒髪。
紫の瞳に、眉間から左あごにかけて刻まれた傷痕。
「殺し屋」
現れたその男は、冷酷な表情を変えず、地道の問いに小さく答えた。
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