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雨が降ったその翌日。
それも夜になり、空気が澄んできた冬のある日。
月は少しだけかけた状態で、星々が瞬く夜空に静止しているように見える。
そんな青白い月光が照らす、街灯のない山奥。
そこには、辺りの景色とは決して似合わない、巨大ともいえる豪邸が建っていた。
まるで隠すように、ひっそりとそこにそびえる赤を基準とした色使いの豪邸。
その中、無数に存在する部屋のひとつに、二人の男女が椅子に座っていた。
大きな長い、高級感ある机を挟み、向かい合っている。
そこには他に六つの椅子が用意されているが、二人の他に誰かが来る気配はなかった。
上座も空席のまま、二人は静かに、自然に囲まれた豪邸内で話をしている。
「あれから七ヶ月が経ちました。依然、招集に応じない者達ばかり。これは問題ですよ?」
そう言い放つのは、長い髪を後ろで丁寧にくくり、緑のカチューシャをする女性。
綺麗に煌めく緑の瞳が、不気味な印象をかもし出す。
「まぁ、一人は政府の頭領で来れないし、“ヘラクレス”の奴はロシアに行ってる。全員が揃わないのは仕方ないな」
言葉を返す男は腕を組み、笑みを浮かべて椅子の背にもたれかかった。
長い黒髪。無造作にはねるそれをそのままに、無精髭を生やしている細身の男。
瑠璃色の瞳を煌めかせ、同じ色のスーツ、ネクタイを身に纏っている。
「そうはいきません。その二人を除いても後四人・・・招集に応じていただかなければ、計画の発動は困難です。“タナトス”」
タナトスと呼ばれた男は微笑し、空席だらけの部屋を見渡す。
すると、不意に部屋の扉が開き、一人の男が姿を現した。
血色の長髪に、真紅の瞳。
その二つを見ただけで、場にいる二人は瞬時に悟った。
「こんばんは」
この豪邸に、誰が足を踏み入れたかを・・・
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