生存

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ヘンリーを除いた全員の視線が、声の主へ注がれる。 そこで、驚きを見せるのが一名。 深刻な表情を見せるのが一名。 舌打ちとため息をつくのが一名。 そして静かな足音と共に、その人物は姿を現した。 蒼い髪と、蒼い瞳。 その二つが特徴の男は、三人が知る限り彼しかいない。 放たれる殺気と、蒼い瞳が合わさると、深海に引きずり込まれたような錯覚に陥る。 レイエス兄弟の長男。 【蒼色の独裁者】の名を持つ男、ランディー・レイエス。 通称 ハデス。 「やぁ、トム君。七ヶ月前はどうも」 「ヘンリーについたか」 深刻な表情を浮かべるトムは、棒を持つ手に力を込める。 いつ、ハデスから攻撃が飛んできてもいいように、準備に入ったのだ。 「会えて嬉しいよ。以前は、屈辱を味わされた」 ハデスの瞳が、より輝きを増す。 「死んだ・・・ハズでしょ・・・?」 そのつぶやきはエリー。 彼女からしてみれば、死体が出てないとはいえ、死亡と断定された人物が目の前に現れた。 それも二人。動揺も無理はない。 「君達が死んだと思っている犯罪者は、生きているんだよ。我が弟を除いてね」 「無駄話はいい、ハデス。なぜ出てきた?」 ヘンリーが尋ねると、彼は微笑した。 エリュシオンや政府の裏をかきたいヘンリーにとって、ハデスの存在はまだ隠していたかったようだ。 「死人と思われるのは嫌なんだ。エリュシオンからの招待状も届かないし、得がないのさ」 「“楽園の招待状”が欲しいのか?エリュシオン側へついてる証だぞ?」 二人の会話に、トムが割って入る。 現れた巨大な戦力。 この存在が、吉と出るか・・・
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