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「ちょっと待ってくださいよっ!!!
捜索打ち切りって…そんなのあんまりじゃないですかっ!!!」
「その通りですっ!
しかもリスレクトの生死すら確認されていないのに登録抹消など…
隊を預かる者として、断固として納得できませんっ!!!」
この非情にして、薄情な軍上層部の決定に、声を荒げて異議を唱えるルカとエリス少尉。
「おおうっ!?ちと、おちゃらけ過ぎたかっ!?
でもさぁ、あたしゃしがない中間管理職なんですよ?
有給すら満足に使わせてもらえないんですよ?
というコトで、その不満はお偉いさんに直接どうぞ~っ!
司令~っ、し~れ~い~っ!!!」
そそくさと逃げるようにレイさんが画面を切り替えると、二分割された正面モニターに、二十代後半ほどの深紅の長髪の男性が映し出された。
「やはり…こうなったか…」
まるでこうなる事を予見していたように、モニターの向こうで待ち構えていた威圧感たっぷりなこの男性は…。
ヴァン=アイナージ総司令。
このラグナシア軍の最強の個人戦力にして、総司令官である。
そのヴァン総司令がエリス少尉達の非難の視線を一身に受け止め、たじろぎもせずに悠然と口を開き…。
「ラグナシア軍 第13特殊遊撃…」
「あぁもぉッ!毎回、毎回まどろっこしいッ!
キメラ小隊でいいですから、どういうコトか説明してくださいッ!!!」
開いた途端、レオナに遮られた…。
たゆまぬ研鑽と数多の実戦を超え、まさに鋼のように鍛え上げられた肉体。
あらゆる不測の事態を考慮し、緻密にして、豪胆な作戦を立案する明晰な頭脳。
更には一軍をまとめ上げるカリスマ性までを兼ね備えるヴァン総司令の、唯一無二の欠点といえるのがコレ。
「ぬぅ…」
このひとは話が長い…。
もっと正確に表現するならば…なんでもかんでも、フルネームで呼びたがる。
今もレオナが制止しなければ…
『ラグナシア軍 第13特殊遊撃部隊 シュナイゼ小隊所属、エリス=ティスト=シュナイゼ少尉、レオナ=ファイザー……』
と、キメラ小隊の隊員全員のフルネームと階級を、ご丁寧に全て口にしていたのは火を見るより明らかだった…。
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