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「それにしてもアレだな。
意外と相棒が居なくても、なんとかなっちまうモンなんだな。
もっと苦労するもんだと思って、気合入れてたんだけどよぉ」
周囲を警戒しながら、アランが何気なく呟く。
目的の研究データを手に入れる為、中央エントランスに足を踏み入れたキメラ小隊の隊員達
エントランス奥に見える直通エレベーターへと続く扉へと向かって、進んでゆく。
「あのねッ!そんなの当然でしょッ!?
あんなバカが居なくたって…」
レオナがアランの呟きに不機嫌そうに口を挟もうとした瞬間…。
「…そうですね…。
…兄さんが居ないおかげで、こんな簡単に事が運びましたよ…」
「ーーえッ!!?」
エントランスの全ての照明が一斉に落ちた…。
「敵襲っ!?誘い込まれたのかっ!?
全員集まるんだっ!互いに背中を合わせて全周囲を警戒っ!!!」
「わっ!?わわっ!!?
りょ…りょ~うかいでアリマスよっ!!!」
突然の暗闇に戸惑いつつもエリス少尉に従って、アリア達はエントランスの中央付近で密集して、不意の襲撃に備える。
…。
……。
………。
いきなり暗闇に放り込まれたキメラ小隊の隊員達に、重苦しい静寂だけがのしかかる。
「……何故、仕掛けて来ないんだ?
なにかを狙ってるのか?それとも…ただの時間稼ぎが目的か?
くっ…敵の狙いがわからん…」
必死に状況を把握しようをするエリス少尉をあざ笑うように、暗闇が沈黙を続ける…。
「……ねぇ、アリア?
照明が落ちる直前に聞こえた声って、もしかしてさ…」
「ふぇ?
レオナちゃん?声って…なんの事?」
「……ううん。
なんでもないの、アンタは気にしなくていいから」
どうやら、レオナ以外には『あの声』…。
感情の起伏が読み取りにくい淡々とした聞き覚えのある『あの声』は聞こえなかったらしい。
(さっきの声…なんでこんなトコに居るのか知らないけど、多分あの子よね…?
だったら、この状況は……マズイかも)
まるで魔物の胃袋の中に放り込まれたような錯覚を覚えたレオナはひとり、背筋に冷たいモノを感じた…。
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