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「う…ん…」
窓から差し込む朝日から逃れるように、ベッドの中の紅い髪の少女がモソモソと身をよじる。
「ふぁぁ…」
観念したようにのろのろと身を起こした少女は、青い瞳をこすりながら枕元に手を伸ばす。
「おはよぉ…クーちゃぁん…」
そうして、間延びした声で枕元に置かれた古ぼけたぬいぐるみにいつものように朝の挨拶をする。
ちなみにこの多分、ネコ科のナニかっぽいデザインをしたぬいぐるみのクーちゃん。
彼はこうみえて百獣の王ライオンだったりする。
では、なぜ彼がこんなネコなんだか、ライオンなんだかよくわからない外見なのかというと当然、事情がある。
それは極めて寝相の悪いこの少女と長年、寝起きを共にしてきたから。
そのおかげでフサフサで、モフモフで、そしてとても立派だったそのたてがみは、残らずむしり取られてしまったのだ。
そう!クーちゃんにとって失われた百獣の王の証たるたてがみこそが!
この傷跡こそが!
彼の主人…レオナ=ガーディ=ファイザードとの揺らぐこと無き深き絆の証!
ひとりで寝付けない主人の安眠を長年、守り続けた証明!
彼とっては何よりもかけがえの無い、彼だけの栄誉ある勲章なのである!
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