☆五月三十一日

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しばらくして気が付くと、男の声がなくなった。 力が抜けた男の体からは、 一突きしたときに感じた鼓動も、 耳を劈くような金切り声も消えていた。 私は抜け殻となった男を起こして、刃を抜いた。 西日が差し込む窓の陽は男を受け入れるように紅く照らし出している。 周りには私のおもちゃが散らばっている。 まるで男もそのうちの一つのようだった。 生気のない男の目を追って振り返ると、新鮮な赤が木製の床に飛び散っていた。 その痕を隠すように、私の影が黒く被さっていた―。
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