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 ────春。  それは、出会いの季節。  それは、別れの季節。  それは、ぽかぽか暖かく、時に厳しい。  頭上に広がる青く澄み渡る空は、少しばかりの綿菓子と、舞い散る薄紅色で埋め尽くされている。  白く輝く光源は、僕の服に住み着いた小さな虫達を焼き殺し、あのお日様の独特な匂いを漂わせる。  そんな景色の中に、枯れた大樹が一つ、何かを待つように立ち尽くしていた。  大樹は、どこか哀愁を帯びていて、垂れ下がった枝は涙の様だった。 『今日は学校、お休みなんですか?』 「いや、休みじゃないよ。ただのサボリだ」 『それは、あまり誉められた事じゃありませんね』  大きな命の残骸。  その太い幹にもたれながら、僕はノートに書かれた文字に返答する。 「ははは。なんだか今日はサボりたい気分だったんだ」 『そうですか……。まぁ、偶には良いんじゃないですか?』 「そう言ってもらえると嬉しいよ。それに君に会えたのも、今日僕が学校をサボったからだしね」 『そう言われれば、良いことかもしれません』  僕は頷いてから、しゃがみ込み、一つの小石を拾う。  それによって露わになった小さな穴から、ミミズが顔を覗かせた。
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