0人が本棚に入れています
本棚に追加
────春。
それは、出会いの季節。
それは、別れの季節。
それは、ぽかぽか暖かく、時に厳しい。
頭上に広がる青く澄み渡る空は、少しばかりの綿菓子と、舞い散る薄紅色で埋め尽くされている。
白く輝く光源は、僕の服に住み着いた小さな虫達を焼き殺し、あのお日様の独特な匂いを漂わせる。
そんな景色の中に、枯れた大樹が一つ、何かを待つように立ち尽くしていた。
大樹は、どこか哀愁を帯びていて、垂れ下がった枝は涙の様だった。
『今日は学校、お休みなんですか?』
「いや、休みじゃないよ。ただのサボリだ」
『それは、あまり誉められた事じゃありませんね』
大きな命の残骸。
その太い幹にもたれながら、僕はノートに書かれた文字に返答する。
「ははは。なんだか今日はサボりたい気分だったんだ」
『そうですか……。まぁ、偶には良いんじゃないですか?』
「そう言ってもらえると嬉しいよ。それに君に会えたのも、今日僕が学校をサボったからだしね」
『そう言われれば、良いことかもしれません』
僕は頷いてから、しゃがみ込み、一つの小石を拾う。
それによって露わになった小さな穴から、ミミズが顔を覗かせた。
最初のコメントを投稿しよう!