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正にトンネルを通る列車の如く、教師の声は山田次郎の耳を駆けていく。
────ならば、どの様な方法をもって、扇風機を食べようか? あれは意外と大きいから、食べるのに苦労しそうだ。
少年、山田次郎は考える。
終業のチャイムが鳴るまで考えて続けて出てきたのは、小さな扇風機を食べれば良い、という何とも陳腐な発想だけだった。
しかし、小さな扇風機の風だと余り涼しくならない、それなら一々食べる必要性は無くなるのではないのか? 山田次郎は、自分の思考力の無さを嘆いた。
「どうしたんだ次郎? そんな難しい顔をして。何か悩み事でもあるのか?」
山田次郎が行き詰まり、ちょうど誰かに相談をしようとした頃。
まるで計ったかの様なタイミングで、山田次郎の親友である、田中太郎が話しかけてきた。
「ああ、太郎か。実はな、さっき凄い事に気付いたんだ。驚かないで聞いてくれよ?」
「なんだよ、勿体ぶらないで教えてくれよ」
「扇風機をさ、食べればさ、常に涼しくならないか?」
────バタン、と瞬間に音がした。
それは、田中太郎が持っていたカバンが、床に接触した事によって生じた音だった。
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