夏の日に

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あの日は、まだ8月の初めというのに、蝉の鳴き声が、命を惜しんむように聞こえるほどの暑さだった。 30代半ばにさしかかり、若い女性と分類される時間が、残り少ない自分自身と重なって、そう聞こえたのかもしれない。 いつもは、どんな季節も、黒のパンツスーツで過ごしていたが、さすがこの暑さで、白い肩やひざを見せる女の子たちみたいに、自分も涼しげに過ごしたいなと考えるほどだった。
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