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私の言い分の穴を上手くついてくるおじさんは、今までで一番いい顔をしてドアノブに手を伸ばす。 子ども心はそろそろどこかへ置いてきてほしいものだ。 「お客さんは気にならないんですか?」 眉間にシワを寄せられても困るんですが……。 「……まあ、気にならなくは、ないですけど」 「そうでしょう!もしこの扉がただのふぇいくだったらどうするんですか! もっと別の問題なのかもしれませんよ?壁に巨大な穴が空いてるのを隠すために誤魔化しで扉を飾りで付けたとか!」 おじさん、フェイクの発音が拙過ぎます。 というか、その辺の裏事情はあなたが一番よく知っているのでは……? でも、おじさんの言い分も一理ある。 そうだ。だってどんなに間違えたって、隣の人の部屋とこちらの部屋を繋げてしまうなんて、馬鹿みたいにおかしな話だ。 もしかしたら、おじさんが言うように、何か別の、商売にかなり不利になるような欠陥があるのかもしれない。 それを誤魔化すためにこんな無理のある状況を作り出したとすれば、考えられなくもない。 よく考えてみれば、赤の他人に私生活を覗かれるかもしれないこの状況を、扉の先だという605号室の人は了解しているの?本当に扉が隣人と自分の縄張りを勝手に繋げてしまう物があったなら、何らかの手は打つはずだ。 私だったら何とかして扉を封印する方法を探すだろう。 しかし、一見すると何か施した形跡はない。 グルグルと考えるうちに、思考が麻痺してきたのか、おじさんのキラキラした眼差しにあてられたのか、生き生きする彼の意見に傾いてきていた。 「……気にはなります、けど」 瞬間、おじさんの表情がパッと明るくなる。 「やはりそうですよねえ! ではこっそり、バレないようにいきますよ? 少し隙間を開けるだけならきっとバレません!」 「もし気付かれたら?」 「にゃ~と言います!」 ああなんだ猫か、って? 無理有りすぎです。おじさんの猫声に目も向けられないってやつですか。 そしてとうとう私の理性も崩れ始めた。 「猫の声なら私の方が可愛くできます!」 「……全部丸聞こえなんですけど」 「ヒィイイぃいイイッ!!!」 突如扉から声がした。 ……扉が喋った!!
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