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あれは、汚れ無い透明な空気が漂う眩しい朝の幻か 陽が陰を奪い影を生む鮮やかな真昼の夢か 目に痛い白が沈み星屑が海に浮かぶ真夜中の淡い蜃気楼か もうだいぶ色褪せた映像 フィルターのかかった劣化だらけの記憶の破片 褪せて薄れて色を無くしても 決して消えることない虚しい軌跡 全てを絡み取って沈むような、どろりとした暗闇から意識が浮かび上がった時 私は首を絞められていた。 思考回路は契られていて、神経は死んだように働かない 生温いまどろみの先に在る何かに手を伸ばせたら、何かが変わっていただろうか 息を遥か彼方に忘れた私に出来たことは、霞む網膜にソレを焼き付けること なのに、 何がソレを阻むのか 上手く映らない 体内に溢れるのは、なんて鮮やかな黒 満たされた、果てしない幸福感 と 底知れない哀愁 心はとっくの昔に麻痺していた せっかく浮かび上がれたのに、あっさりと沈み始める 深い夢に落ちる、その前に聴こえた 悲しく紡がれた優しい歌、のような言の葉 私の頬にぽつりと零れ落ちた、純粋過ぎる綺麗なきれいな想いの雫 が、肌に染み込んで、私の芯へ奥深く、中枢へ流れ込む ソレは確かに私の中へ息づいた 首に当てられた冷たい温もりは今も、死んだはずの神経に生きる 刻まれた傷が繋ぐ 私が息を止めてまでも欲しかったもの 夢の様な私の最期 その声帯の震動を、眠る鼓膜は酷く愛した
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