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もう一つの部屋は洋室。
それなりの広さはあるし、こちらも暑い。つまり日当たりが良い。
収納スペースも、一人で使うには十分な大きさだった。
それから浴室。狭いかと思いきや普通に足を伸ばせる浴槽に感動した。
お風呂って女の子には重要だよね。
脱衣所、洗面所も窮屈さは無い。トイレもまあ普通。
玄関も、下駄箱を置いても圧迫感は無い。
1LDK。立地条件はいいのに値段が随分と安くなっていたから、目茶苦茶狭っ苦しい部屋を想像していたのに、なんだ。
とっても快適というか、一人暮らしには十分すぎる。
1DKか、ワンルームも視野に入れていたのに、なんだこの物件。
激しく値段と相応しくない。
これだけ広くて日当たり抜群で環境も良く、わりと新しめの建物には有り得ない安値がついていた。
というより不思議なのが、同じマンション内の別の部屋とこの部屋の家賃がかなり違うこと。
別の階ではあるが、造りはほぼ一緒のはず。
なのに、全く別の建物なんじゃないかってくらい、馬鹿みたいに値に差があった。
この部屋だけ異常に安い。
しかしぱっと見たところそこまで値を下げる必要性は無い。
見ただけじゃ分からないような場所に問題があるんだろうか。
トイレの水が流れないとか、この部屋だけ異常にゴキブリが散歩しに来るとか。
「ああ、いかがでしたか?
結構いい感じのお部屋でしょう」
「あ、はい。むしろ良すぎて怖いくらいです」
よっこらしょ、と重たい腰を上げてニコニコしながら歩いてきたおじさん。
だいぶ体内の熱が下がってきたようで、赤くなっていた顔色が健康的な肌の色に戻っていた。
「あの……こんなに素敵な部屋なのに、どうしてここだけ妙に安いんですか?
……まさかあれですか?いわくつきの部屋だとか」
自分で言っておいて体温が嫌に下がるのを感じる。
よくあるし。前の住人がここで自殺したとか。
オカルトは……まあ得意ではない。誰かと一緒に住むならまだしも、一人暮らしとなると……どんなにスペシャルプライスだとしてもちょっと、ね。
しかしおじさんはそんなマイナスオーラを軽く笑い飛ばした。
「いやあ、そーいう類いではないんですよね」
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