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母親はそれからしばらく玄関先でわやわやと言葉を飛ばして来た。 その途中で祐樹もやっとこれは聞いておかないとマズいと分かったらしく、なんとかわずかばかり情報を得る。 少女の登校日は三日後 多分あと少ししたらこの娘の荷物が届く とか。 いやむしろそれくらいしか得られなかったけれども。 本当は祐樹は母親に質問を浴びせたい所だったがこんな状況になって 「実はあの電話は寝ぼけてて、適当に返事したから何が何やら」 なんて言い出せる訳もない。 そんなこんなしている内に母親は祐樹に 「これ、アディショナル生活費ね」 なんて言いながら金が入った封筒をババ臭いバックから取り出し渡して 「困ったら連絡ちょうだい。あと有栖ちゃんに手出しちゃダメだからね」 とそれだけ言うとさっさと帰って行ってしまった。 祐樹は今すぐ困った事があると電話したい気分に駆られてしまう。きっと普通に電話に出てればなんともなかったであろう出来事だったろうが、今の祐樹には超常現象レベルの出来事だった。 だがいつまでもこうして玄関に立っているべきでは無いという事はなんとかわかっていた。とりあえず祐樹は先ほどから地味に左右に体をふらふらと揺らしながらずっと玄関に立ち尽くしている まるでリングの貞子のような少女を家に上げてあげるのが先決であると決める。 だから 「あ、なんかこれからよろしく……みたいだね。とりあえず上がって」 なんてできるだけ優しい声で家に上がるように促した。 少女は少しだけ周りを見るように頭を動かすと、なんの挨拶もなしに靴を脱ぎ捨てて祐樹の真横を通り過ぎて行った。 「……」 祐樹は黙って渋い顔をするほかなかった。
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