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見たこともない場所に、私はいた。
高層ビルなんてひとつもない。木造の平屋が続く町並み。
然程大きくもない川に架かる、これまた木造の小さな橋。
道行く人々はまるで時代劇の様な風貌。
綺麗に結われた黒髪に、腰には立派な刀が二つ。
まるで洋服を着ている私が浮いてるみたい。
「ど…どういうこと…」
私の疑問はポツリと虚しく宙に舞う。
「おい、お嬢ちゃん。おかしな格好してんなぁ?」
おかしな格好をしているお嬢ちゃんとは私のことだろうか。
失礼な野郎だ…と一瞬ムッとしたが、振り返り失礼な野郎の姿を目にした途端、背筋が凍った。
「ほぉ。異人のようなナリをしてるが言葉は通じるんか」
そう言ってニヤニヤと笑う男の腰には、やはり立派な刀が添えられていた。
いかにも悪そうな顔をしている失礼な野郎に、私は怯まずにはいられない。
「なっ…何かご用ですか」
やっとの思いで発した声は恐怖から震えている。
ジリジリと私に歩み寄る失礼な野郎が気色悪くてたまらず、私もゆっくりと後退りをした。
「なかなかの別嬪さんだなぁ。そんなに怖がるんじゃねぇよ」
不意に腕を掴まれ私は必死に抵抗をするが、やはり視線は自然と腰の刀にいってしまう。
「…っは、離して!!!!」
今いる場所も、この状況も全く理解できない。
何故こんなとこにいるのか。
何故こうなってしまったのか。
「うっせぇな!!暴れるんじゃねえよ!」
より一層強く掴まれた腕が、痛い。
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