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「っやめて…!!!!」
私の渾身の叫びも、夜の町に虚しく響くだけ。
皆チラリとこちらを見るが、所謂見て見ぬふり。
「おっきい声出すんじゃねぇ!!殺されてぇのか!!」
怒鳴る男の手にはついに刀が握られ、その切っ先は確実に私を狙っていた。
ジワリと汗が背中を伝う。
膝はガクガクと震え、追いやられた壁にピタリと体をくっつけることにより、かろうじて立っていられた。
男の切っ先は私の喉をツンと刺激し、脅しているのか本当に殺してしまうのか…恐怖に耐えられず前者であることを願いながら、私はギュッと目を瞑った。
その瞬間だった。
「こんな時間に何してんですか、おにぃさん」
「なっ…貴様…壬生狼の…っっ」
みぶろ…?
私は男の反応からして味方が現れたかもしれないと思い、うっすらと目を開けた。
「抵抗しなければ命までは奪いませんよ」
そう涼しげに言い放つその姿は、まるで天使の顔をした悪魔の様だった。
「くそっ…こうなったらコイツの相手が先だ!!!」
「へぇ。刃向かうんですか」
「馬鹿にするな!!!壬生狼のくせしやがって!!」
「ならば…容赦はしませんよ」
瞬間、月明かりに照らされた鮮やか過ぎる程の紅が視界を遮った。
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