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先ほどまで威勢を張っていた男は声もあげず、ゆっくりと前に倒れていった。
「きっ……きゃっっ」
その信じがたい光景に堪らず声を上げそうになった私に、すかさず天使の顔をした悪魔は私の口を大きな手で塞いだ。
「…あなた、妙な格好をしていますね。……異人ですか?」
瞬時にブルブルと首を大きく横に振る。
私にはさっきの失礼な野郎より、よっぽどこの男の方が恐ろしく思えてならなかった。
「…手荒な真似をして申し訳ありません。腕だけ縛らせて貰いますね?」
そう言いながら、やっと口が解放された私は息を大きく吸い込めばすぐに手首を後ろで、手慣れた風に縛られてしまった。
ああ、あの失礼な野郎みたいに私も殺されるんだきっと。
あまりにも現実離れした現状に、私は夢でも見ているかのような錯覚に陥り、妙に冷静さを保っていた。
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