第1話"運命と必然"

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どれくらい歩いただろう。 20分程だろうか。 他人との終始無言のウォーキングは少しツライものがある。 私はただぼんやりと夜空を眺めながら、促されるままに歩いていた。 あまりにも空が輝いている。 空気が透き通っている。 数えきれない程の星と、眩しすぎるくらいの月明かり。 月の周りを囲むプリズムに目が眩む。 そんな美しさに、我の身に起きている事実を忘れそうになる。 「…そんなに空が珍しいですか?」 その声はどこが馬鹿にしている様な気がして、空ばかり見つめていた自分がなんだか恥ずかしくなる。 でも…本当に珍しい。 「私の…私の住んでいる場所ではこんな綺麗な夜空は見れません」 俯きながら言う私に、男はなおも質問を続ける。 「どこの生まれなんですか?」 「東京です」 「とうきょう?」 東京を知らないのかと私は驚きを隠せない。 「あの…此処は日本ですよね?」 男が怪訝な表情で私を見た。 「そうですが…。あなた異人ではないのでしょう?何故そんな質問をするんですか?」 「いえ…あの…東京をご存知ないんですか?」 「…聞いたことないですね」 少し不機嫌そうに男は返答すれば、キュッと口をつむってしまった。 夢の中じゃ東京も通じないのか。 何故か私はそんな呑気なことを考えていた。
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