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遠くから聞こえるのは沢山の人々の叫び声とざわめき。
薄く開いた目に一番初めに映ったのは赤い地面だった。
口の中には鉄の味。
きっとこれは血だ。
脈々と僕の身体を巡っていた血液が外に飛び出してしまったのだろう。
感じるはずの感覚はない。
痛み、苦しみ…何1つ感じられない。
只、『死ね』と云う第三者から自分を見下ろしたような答え。
光の無い暗い夜を見ていた。
目がきかないから何処に手足や頭があるのか分からない様な…頭は此処にあるのにも関わらず手は何kmも向こうにあるようだった。
身体のぼやけた線で空中に溶け込む様で溶け込まないギリギリの僕の横を何かが通過するのは当たり前。
ぼやけた線はやがてはっきりとした線となり感覚もはっきりとする。
暗い夜は薄暗く…そこで僕はゆっくりと瞼を開けた。
飛び込んで来たのは、眩しい世界で。
薄汚れた空気を肺の奥深くまで吸い込む。
おはよう。
声にならない声は部屋を充満した。
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