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そっと触れたのはもう一人の僕。
顔の右半分は白い包帯によって丁寧に巻かれ、黒い左目を覗き込もばそこには僕が写っている。
君は僕で、僕は君。
そっちの酸素は足りている?
僕の世界は小さな金魚鉢に犇めくピラニアが沢山いて酸素不足です。
でも食料は何故か沢山ある。
コンコン―…
静かな部屋にドアをノックする音が異様に大きく響いた。
部屋に入ってきた人物はあの時の看護婦、有賀さんだった。
僕を見るなり複雑な顔をして見せる。
僕からもう一人の僕を引き離してから
「もう少し体調が良くなったら外へ散歩に行こう?」
そう言われ、窓の向こうを眺めた。
澄み渡る青。
「あの日と同じだ」
僕はボソボソと独り言かのようにでも誰かに言っているかのように一つ一つ単語を繋げて言う。
「僕はきっと神様に嫌われている」
そう口にした時、有賀さんは顔を真っ赤にして怒り始めた。
そんな声を何処か遠い場所に追いやって、僕はまた窓の向こうを眺めた。
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