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廊下を歩く人々に溶け込むように歩幅や速度を合わせて歩く。 誰かに僕の存在を悟られ、見つかってはいけない。 軈て人が滅多にいない階段廊下へと出た僕はそのまま階段を一段また一段と上っていく。 今度こそ鉄で出来たくすんだ銀色のドアノブを回して押す。 重く低い音をたててドアは開いた。 あまりの眩しさに僕は目を細めて手で影をつくった。 屋上の物干し竿には白いシーツや布団カバーといったものが干され、風に靡いていた。 汚したい気持ちを押さえてその中を掻い潜り、防護用に取り付けられたフェンスに手をかけ、座った僕は 「死ぬの?」 声をかけられた。 このタイミングで話しかける奴を見ようと上半身と首だけを動かし振り向いた。
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