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路肩には鑑識のバンや数台のパトカーと覆面車両のクラウンが並んでいた。
どの車両からも赤ランプが点灯し、道行く人々に『近寄るな』と警告している。赤という色は本能的に危険を察知させる色だ。普通の人間なら近寄らない。
玖辺は覆面パトカーであるクラウンの運転席に乗り込むと「タバコ持ってないか?」と聞いてきた。西条はポケットから煙草を取り出し一本渡す。銘柄はスモーキン・ジョーのフルフレーバー。
「変わった銘柄を吸ってるな」と呟いて玖辺は火を点ける。紫煙が夜の空気に混じった。
「俺はいったん署に戻る。後の事はお前さんたちに任せたぞ」
そう言って玖辺はキーを回した。
「俺たちが寝る暇もなく働くなんて、嫌な時代になったもんだ」
去り際に玖辺はそう言った。それは誰に対して言ったわけでもない独り言だった。
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