西条桐江の日常

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刑事手帳に要点を追加で書き込むと西条は玖辺に聞いた。 「第一発見者はどこです?」 「パトカーん中さ。会社帰りのサラリーマンで酷く酔っていてな。ろれつが回っていない。酔いがさめるまでマトモな話は期待できんぞ」 「それは残念です…」 すぐにでも現場の情報が欲しかったがそれでは無理だ。バケツで水をぶっかけて酔いを覚まさせるわけにもいかないし……。 事件発生から初動捜査の3時間でその事件の解決確率が大きく変わるといわれているが、今回は難しい。 「そうですか……そうなると調書を取るのはいつになりますか?」 「発見者の酔いが覚めしだいってとこだな。始める前に連絡を入れるから新宿警察署に来てくれ」 そこまで言うと玖辺は現場を出た。 封鎖現場の回り溢れるようにいた野次馬もいつのまにか少なくなり、歩道は空いていた。 少し離れたところで制服警官が朝刊のネタを探しに来たマスコミをテープの外側に抑えているのが見えた。 マスコミの連中は今にでも現場に踏み入ってくるような勢いで制服警官に何が起きたか聞いている。 その姿を見て西条は顔をしかめる。西条はマスコミが嫌いだ。奴等は適当な憶測を堂々と紙面に載せて、さぞかしそれが公式発表のように書き立てる。そのせいで解決できなかったり犯人に逃げられた事件も少なくは無い。 そうなると今度は、警察は無能だ!被害者の悲しみを知れ!等とまくし立てる。 無責任で利益の追求しかしない、ハイエナのような連中であるマスコミなど、捜査の邪魔以外のなにものでもない。
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