西条桐江の日常

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八月五日の夜、夕方から降り始めた雨はやがて勢いを増し記録的な豪雨となっていた。 深夜零時をすぎた頃の新宿では雨のせいで終電が送れ、飲み屋帰りのサラリーマンがほろ酔い加減のまま多数ふらついている。その中を西条桐江は歩いていた。 面倒な事になった―――。オフの日だというのについていない。西条はポケットからタバコを取り出し景気づけに一本火を点ける。 西条桐江は刑事である。近年警視庁にて新たに発足した機関、異常犯罪対策室の人間だ。異常犯罪対策室とは、近年急激に増加した猟奇犯罪や連続殺人といった凶悪犯罪に対処するために警視庁が試験的に組織した部署である。 西条桐江は少し前まで少年課の刑事であったが、とある事件をきっかけに異常犯罪対策室の室長にヘットハンティングされ対策室の刑事となった。 その選択に後悔はないが。いかんせん、この仕事量の多さはどうにかならないかと度々思う。 なぜなら彼女の休暇は、始まってからものの数時間で終わりを告げてしまったからだ。
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