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皮膚が全て剥ぎ取られ、玉葱の皮のような色をした筋肉が露出した右腕。
肩の付け根から切断されたソレは腐敗が進み、鼻腔内に纏わりつくような甘い臭いを放っていた。
筋肉の隙間からは無数の蛆や百足が腐肉の間を這っているのが見えた。
西条は仕事柄、こういった死体に慣れてはいるものの、酒を呑んだ後に見たため少し具合が悪くなった。
顔色が変わった西条を玖辺が「大丈夫か?」と気遣った。新人ではないのだから腐乱死体を見て具合の悪くなるなんてみっともない姿を見せるわけにはいかない。
「大丈夫です」と呟くと西条は次の肉塊にペンライトの光を当てた。人間の左足だった。
一際大きな肉塊を挟み置かれていたのは、右腕と同じように皮膚が剥ぎ取られた左脚。
これも股関節の付け根から切断されている。こちらの腐敗も右腕と同じように酷く、蟲が這っている。
どうやら右腕と左足は切り取られてからかなり日が経っているようだ。
大きな肉塊、それは四肢と頭部を切り取られ、出来損ないの達磨になった人間の胴体であった。
西条はそれを見てあることに気がついた。何故かこの部位だけは腐敗していない。
詳しくは司法解剖でもしなければわからないが、傷口からの血液の凝固状態から見ても死後数時間といったところだろう。
西条は背中を見せた状態の胴体を両手でひっくり返す。
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