1人が本棚に入れています
本棚に追加
本来は鑑識や科学捜査研究所の人間以外が事件性のある遺体に触れるのは、思わしくない。
だが、西条は少しでも多く情報を得るためにあえて遺体に触れた。
もちろんこういった資料は鑑識結果や司法解剖の報告書で後に上がってくるが、やはり生の現場のものではないので見落としや気がつかない事もある。
西条は注意深く手に持ったペンライトで胴体を照らし、観察する。
肉付きの加減や肩幅から見てガイシャは女性だろう。胴体の腹部にはアバラを避けて胸部下から縦にかけて大きく切り裂かれていた。
中からは腸や肝臓が掻き出されたように飛び出し、いくつかの筋肉によってかろうじて垂れ下がっている。
内臓の色はやはり新鮮なピンクだった。腐肉を貪る蟲も見当たらない。
となるとあの手足と胴体は別人のものになるのだろうか?手足と胴体の腐敗状態に違うというのはいったい何故だろう?
西条は刑事手帳を取り出しペンを走らせ、疑問や現状の詳細を書いていく。
初動捜査で一つでも多く疑問点や現場に残された証拠を集めるのが、事件解決への鍵となるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!