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ドアは開けっ放しにされている。
4人部屋。
聡子は・・・。
手前の左側のベッドから聞き慣れた声がする。
看護婦さんと話してるみたいだ。
会話は聞き取れないけど、間違いない。
聡子の声だ。
少し深呼吸して笑顔で入る。
何もなかったかのように・・・。
まるで昨日まで一緒に遊んでた友達を訪ねるかのように・・・。
「聡子ー久しぶりー」
そう言ってカーテンを開いた。
聡子はビックリしたように目を真ん丸にして私を見てる。
「有希ー?来てくれたんだー母さん、何も言ってくれないから有希に手紙渡せたのか不安だったんだよー」「あっ。看護婦さん、また後で話し聞くから後で来て♪♪」
親しげに看護婦さんに話す聡子。
看護婦さんはニコッと笑顔で私に会釈して部屋を後にした。
聡子は久しぶりの再会にも関わらず、前と同じ雰囲気で、私に笑顔を向けてくれた。
そしてー。
しばらく話した後、
病気のことを話しはじめた。
淡々と、冷静に、感情を挟まないで話し続けた。
自分の病気の事。
今までの事。
これからの治療法の事。
聡子は相変わらずの調子で、どこが悪くて入院してるのか分からないくらいに元気だ。
だけど、
《聡子の体が癌に侵されている。》
その事実だけは間違いないらしい。
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