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「あれ?ユキは?」
問い掛けながらツキカを視界に捉える。
ツキカは少し首を傾げて、困ったような笑みを浮かべた。
「いないのよ。おやつの後、ひとりで何処かへ行ったってツカサが……」
ツキカの答えに、ヤスナリは脚に纏わり付いているツカサへ目をやった。
「ツカサ、ユキは何処へ行ったって?」
「ん?父ちゃん、こっち来て」
ツカサはヤスナリの手を掴むと、窓辺へ引っ張っていった。
倒れていた椅子を起こしてよじ登る。
そこからガラス越しに外を覗き込み、森の方を指さした。
「あっちに行った」
この辺りの森は手入れが行き届いていて、崖や谷川等の危険な場所も無い。
だから昼間は幼い子供たちもよく遊びに出掛けていた。
「森か……」
しかし今、空は黒い雲に覆われ直ぐにでも雨が降り出しそうな状態だ。
ヤスナリは両手を広げて背伸びをしたツカサを抱き上げると、ツキカに歩み寄った。
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