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「ン………」
居間の方で、誰かの話し声がしている。
大人の男の人の声がする。
「……父ちゃ……ん?」
眠い目を擦りベッドから下り、一緒に寝ていたドラゴンの縫いぐるみを片手に抱えてツカサは部屋を出た。
居間の扉を押し開けると、明かりが点いていた。
何人もの大人が、せわしなく歩き回っている。
知っている人もいれば、知らない人も居る。
父が働くギルドの証をつけた人も居る。
今が何時なのかなど分からないし、考えもしない。
ただ、何故こんなに沢山の人が自分の家に居るのか――
それだけは不思議だった。
何となく不安になり、扉の前に立ったまま部屋の中をぐるりと見回す。
その目に双子の弟のユキナリを見付け、ツカサはホッと息を吐いた。
「ユキ」
小さく呼んで、微笑みを向ける。
白いタオルに包まり壁際に立っていたユキナリは、一瞬ツカサを見て、直ぐに顔を背けた。
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