Restoration 0 ― 雨の記憶 ―

4/20
前へ
/537ページ
次へ
. 「あ……また光ったよ!」   長閑な田園風景が広がる町、ハルブロット。  豊な自然に恵まれたここは、羊や牛の飼育が盛んだ。  町外れの小高い丘の上の小さな一軒家。  窓の傍へ置いた椅子の上に立ち、ツカサが空を見上げる。  ツカサ・レイミ・プロミナンス―― 4歳。  耳が隠れる程度の長さの金髪は勢い良く跳ね、それと同じ色の瞳は好奇心という光に溢れている。 「まただ。母ちゃん、凄いよ!」  針仕事をしていた母のツキカを振り向いて、ピョンピョンと跳ねる。  途端、椅子がガタンと音を立てて傾いた。 「あ―― うわっ!」  声を上げると同時に椅子から転がり落ち、ツカサは頭を撫でながら顔を顰た。 「痛い……」  手にしていた縫い物をテーブルに置いて、ツキカが立ち上がる。 「あらあら……」  焦げ茶の髪を揺らしツカサに歩み寄ると、母は顔を覗き込んで頭を撫でた。 .
/537ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加