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「何処へ行ったのかしら……」
不安げに呟き頬へ手を当てたその時、玄関の扉に下げられたカウベルが鳴り響いた。
「あ、父ちゃんお帰り!」
ソファーから飛び降りツカサが駆け寄ると、父のヤスナリは太陽のような笑顔を振りまく小さな息子を抱き上げた。
ヤスナリ・イスト・プロミナンスは小さなギルドに属している。
が、その腕は幾つもの巨大ギルドに引抜きを提示される程。
負けん気が強く、考えるより先に行動する、一言で言うと野生の勘で動くタイプ。
そして自他共に認める愛妻家で子煩悩な男だ。
「ただいま、ツカサ。いい子にしてたかあ?」
茶色の双眸を細め、ツカサの顔へ頬を擦り付ける。
「うん、いい子……父ちゃん、スリスリしたらおヒゲ痛いってば!」
小さな手で押し退けられ、ヤスナリが顔を離す。
「ハハハ……ごめんごめん」
笑いながらツカサを下ろすと、ヤスナリは辺りを見回した。
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