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「中川先生おはようごさいます!」
「おはようごさいます。これからよろしくね?」
「うん、中川先生よろしくおねがいします」
あれから10年‥私は小学校の教師になっていた。
今日は転勤先で初の出勤だ。
私は今まで色んな学校を訪れた。
そしてその度に、その学校の屋上のドアを開ける‥もしかしたら彼が笑っているかもしれない‥という期待を胸に‥
しかし、いつも彼はいない。見えるのはただただ真っ青な空だけ。
この学校もどうせ同じ‥そう思い、屋上のドアを開けると、そこには中学年くらいの男の子が真っ青な空を見上げていた。
私は思わず、その男の子に聞いた。
「こんな時間に何してるの?もうすぐ授業始まるわよ‥君、名前は?」
男の子は振り返り、笑って言った。
「川瀬 空史‥っていうか、君って呼ばないでって昔言ったでしょ?こう見えても僕らタメだよ!?…ってもう違うか…」
その時、あの夢の中の彼との思い出が一斉に蘇った。
彼だ‥彼が目の前で笑っている…あの夢とまったく同じ光景だが、私は分かっている。
これは夢では無いと…
「愛梨、好きだよ‥」
「私も…」
2人は真っ青な空の下、笑い合った。
嘘も偽りも無い…真っ青なこの世界で…。
完。
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