捨てられた花嫁(5)

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「アルフォンスに嫁ぐことになってたからよ。すぐに一緒に社交界へ行かなくなるだろうから、と思って」  我ながら、重苦しいことをよくここまで軽く言えたものだ。  所詮政略結婚、最初こそ並んで社交界へ行っても、すぐに自分は屋敷で待つことを選ぶつもりだった。冷めた考えだと自分でも思うが、いずれアルフォンスには好きな女性が出来ると思っていた。  昨日は、それが異常なまでに前倒しになっただけ。そう考えるしかない。でなければ、義務を放棄したことに苛立ちが納まらなくなりそうで怖かった。 「でもそれじゃ、不仲に思われるんじゃ……」 「ポーラっ!」 「あーっ!ごめんなさい、奥様!」  ポーラと呼ばれた、新しいレティシア付きの侍女は勢いよく頭を下げた。  テレーズとイレーヌ、もう二人の侍女―エイプリルとフィリス―は、ポーラを凝視している。 「いいのよ、本当のことだもの」  レティシアの返答にポーラは幾分安堵したみたいだ。しかし、テレーズから送られる厳しい教育者としての視線は変わらず強烈だ。  不意にテレーズはこちらを向く。 「ドレスはたくさん持ってきた方がよかったかも知れません」 「どうして?」
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