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ニコニコと笑いながらレティシアの頬を撫でるエレイン。彼女とは初対面だが、不思議と嫌な感じはせず、むしろそうしていて欲しいとさえ思えるほど。親しみやすい微笑があるからかもしれない。
「さ、座って」
そう言って、手ずから茶を入れ始める。おやめください!と叫ぶ侍女などお構いなしだ。どこか日常的ものを感じさせ、彼女がいつも侍女に叱られながらもやっていることを想像させた。
せっかく可愛い義妹ができたんだもの、と嬉しそうに笑って、どこかうきうきとした足取りで椅子に腰掛ける。
「ジェラルドがこの城に足を運ぶなんて考えたことなかったわ」
「え?ここは彼の生家でしょう?」
「あら、知らなかったのね。いわなければよかったわ……。彼ね、ここが嫌いなのよ」
意外なことを聞いた。
彼が各国を旅していたことは知っていたが、もしかすると、それはこの城にいたくがないためなのかもしれない。
「ジェラルドがなぜ今日この城に来たかは知ってる?」
「いえ、陛下からの御用ではないんですか?」
「そうであることに間違いはないのだけどね、問題はその内容なのよ」
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