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━━丑三つ時。━━
「ん~……。」
京太郎は異様な寝苦しさから目が覚めた。
「(くっ……。
体が動かない……。
声もでない……。)」
体を動かそうとしても、声をだそうとしても体が固まったように動かない。
所謂、『金縛り』状態である。
「(何だ……染みがはっきりしていく……。)」
京太郎の意識が段々はっきりして行く。
目をゆっくり開くとぼんやりとしかなかった天井の染みがはっきりと浮き出てるのが確認できた。
明らかに昼間とは様子の違う染み。
いや、部屋全体が妙に湿気を帯び奇妙な雰囲気になっている。
『ふふふ。
久しぶりね、京太郎君。』
段々染みがはっきりしてきて一人の女性へと姿を変えた。
そして女性は京太郎の上に、馬乗りになった。
「だ……れだ?」
ずしりとかかる女性の重みに堪えながら、京太郎は声を振り絞った。
市松人形のように黒くて長い髪、透き通るように白く青白い肌、大きくギョロッとした目、骨張った体……。
京太郎は気味悪く思った。
背中からは脂汗が滲み出る。
『あら?
忘れたの?
中学の頃のクラスメートの日高 美緒(ひだか みお)よ。』
白い歯を見せて女性はニヤリと笑った。
「!?」
日高 美緒……。
京太郎の脳裏に『過去』が浮かぶ。
中学の時の同級生。
長い髪はいつも三つ編みにして、眼鏡をかけていた。
消極的な子でいつも黙って下を向いていた。
時折、俯いたまま寂しげに京太郎をジッと見ていた。
憂鬱そうな瞳がとても印象的な子だった。
京太郎にとってあまり彼女は意味のわからない存在だった。
頭がよく優等生で近寄りがたい存在でもあった。
まさかこんな形で再会する何て思ってもなった。
『思い出したみたいね。
貴方に振られた女よ。』
悲しげな表情を浮かべて美緒は言った。
「お……ま……幽……霊?」
明らかに生きてる者ではないと京太郎は感じていた。
『ピンポーン。
正解。
あたし、死んだの。』
表情を変えずに美緒は平然と言う。
「…………!?」
あまりにも美緒が平然としており、京太郎は『恐怖』を感じた。
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