染み。

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『結婚前提に付き合ってた彼が、浮気してあたしの前から逃げたの。 頭きたから見つけだして、殺してあげたわ。』 淡々と美緒は話す。 「な……んて事を……。」 京太郎は感情もいれず淡々と話す美緒をみて更に恐怖を感じた。 『彼があたし以外の誰も見ないように殺して、あたしも死んだの。 これで彼と一緒になれると思ってね。』 誇らしげに笑みを浮かべながら美緒は言う。 美緒の誇らしい笑みは京太郎の目にしっかり焼き付いた。 人の死を何とも思わない美緒の顔が……。 「(何て女だ……。)」 京太郎は段々と頭がはっきりしていく。 頭の中で一つ一つ話をまとめていく。 美緒のとんでもない話を……。 『でもね、あたしの念が強すぎて地縛霊になったの。』 念が強すぎた……? 京太郎は複雑な気持ちだった。 「……地縛霊?」 確かめたかった。 何故、美緒が地縛霊になったのかを……。 きっと美緒には、余程の思いがあるのだろう。 『この部屋あたしが住んでたのよ。 あたしはここに残り、あたしを愛してくれる人を待ってたの。』 美緒は愛に飢えている。 本気の愛に。 形だけではない。 本気で美緒を愛してくれる人を待っていたのだ。 「(……成る程。 このタイミングで俺が来たワケか。)」 美緒が好きだった京太郎。 愛してほしいという美緒の気持ち。 色んな気持ちが絡み合い、京太郎と美緒は再会したのだろう。 『今度こそ幸せになりたいの。』 美緒の本音。 誰しもが願う事。 人それぞれ幸せは違う。 願いは違う。 それはその人にはきちんとその人の意志があり、価値観も違うからだ。 「…………。」 美緒の愛の形。 『間違ってる』と京太郎は否定できなかった。 言葉を探したが、なんと言ったらいいかわからなかった。 愛って何? 幸せって何? 美緒の話を聞きながら、京太郎は自問自答する。 ……だが、答えを導き出す事は出来なかった。 人それぞれその答えが違うから……。
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