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『あたし、貴方に振られて人間不信になって折角入った高校も中退して……。
そんな時に出会った彼だったから余計に悔しかったのよ。』
美緒の目が変わった。
どことなく悲しそうな表情をしている。
「(泣いてる……。)」
美緒の頬を伝う涙を京太郎は凝視する。
『でも、心の何処かで貴方を待ち焦がれてた。
引っ込み思案のあたしにいつも優しくしてくれる唯一の男性だったからずっとずっと……忘れられなかった。』
涙を拭い、美緒は京太郎を真っ直ぐ見つめた。
冷たい瞳で見つめた……。
「(そういえば、俺何でこの子振ったんだっけ。
思い出せない。)」
京太郎は美緒の瞳に吸い込まれそうな気分になりながらも、記憶の糸を辿る。
だが不思議と、美緒を振った理由が思い出せない。
まるで、何者かに記憶を消されたかのように。
『……今度こそ、一緒になろう。』
美緒は京太郎の首に手をかける。
ヒヤリとした手の冷たさが京太郎の首から前進へ伝う。
生きてる人間ではない独特な冷たさが……。
「ぐっ……。
や……めろ。」
徐々に美緒は手に力を込める。
女性の力とは思えない力で、京太郎の首をぎゅんぎゅん絞めていく。
必死で京太郎は抵抗するが、あっさりとかわされてしまう。
『ねぇ、覚えてる?
貴方があたしを振った日の事……。』
首を絞めながら、美緒は表情を変える事なく京太郎に問う。
首を絞められ、京太郎はもがいている。
「うっ……。」
京太郎は薄れゆく意識を必死で保ちながら美緒の話に耳を傾ける。
呼吸が出来ない京太郎の意識は朦朧としていた。
『殺される!』
京太郎は心の中で叫んだ。
京太郎の叫びは声にはならず、虚しくも美緒の手の力は弱る事なくどんどん締め付けている。
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