染み。

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『「受験勉強に励みたい」そう言ったくせに、貴方はすぐに違う子と付き合い始めたわよね。』 冷たい瞳をカッと見開き美緒は京太郎を見下ろす。 「(思い出した。 この子を振った後、当時片想いしてた子に想いが伝わり付き合ってたんだ。 でも、その子は……。)」 思い出したくない。 京太郎は気づいた。 美緒をふった理由を思い出せなかったワケを……。 無意識のうちに彼女の事を……自分が愛した人を思い出すのを拒んでいたのだ。 『悔しかったわ。 とてもとても悔しかったわ。 その女を殺したいくらい憎かったわ。』 ギリギリと歯ぎしりをしながら美緒は鬼の形相をしている。 「!! ま……さか!」 美緒の恐ろしい顔に全身の毛穴から汗が吹き出す。 京太郎には美緒の言葉の意味がわかっていた。 『フフフ……。 お察しの通り。 あの女殺したのはあたしよ。 制裁してあげたのよ。』 にたりと美緒は白い歯を見せ気味悪く笑った。 「マジ……かよ。」 恐怖のあまり京太郎は歯がガチガチときしんだ。 震えは止まらず、更に汗が吹き出す。 シーツには京太郎の汗で大きな染みができていた。 『今度は貴方を殺してあげる。』 殺しは美緒にとっては当たり前の事。 所謂、『快楽』であり自由を手に入れる手段でもあるのだ。 「ぐぎぎぎ……。」 美緒は渾身の力を込める。 京太郎は美緒の手を外そうともがく。 だが不思議な事にもがけばもがくほど、美緒の手は京太郎の首に減り込む。 とうとう京太郎の意識は完全に途絶え、心臓も止まった。 京太郎の手がだらりと力無くベットから落ちる。 美緒はそれを確認すると、ゆっくりと手を外した。 『今度こそ、貴方はあたしの物。 永遠にね……。』 美緒はぐったりとなった京太郎を優しく抱き抱え、キスをした。 最初で最後のキスを……。
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