プロローグ~季節は巡り…

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カンカンと警笛が鳴り響く 踏切のバーが降りた もうすぐ電車がここを通るんだ… 結「…」 私はもうすぐこの世から消える… やっと解放されるんだと思うと、何だか体が軽い いつもはうるさいと感じる警笛も、今は心地よく感じる… さぁ、そろそろだ 私はバーをくぐり、上りの線路の真ん中に立って目を閉じた これで私は… ?「なるほど。確かにここなら電車がよく見えるな」 結「え?」 すぐ隣から聞こえてきた声にビックリし、急いで声の主を確認した 男の人が腕を組んで隣に立っていた 黒髪で、服装は夜になれば闇に溶け込めるのではないか、そう思うくらい黒に統一されている 腰には左右に二つずつ計四つの、煙草ケースよりも少し大きいくらいの箱をつけていた 結「あの…誰ですか?」 ?「それより、電車が見えたぞ」 結「…そうですね、早く出てください」 ?「キミは?」 結「私は…」 ?「どっちでもいいか」 そう言って隣の人は組んでいた腕を解いた ?「さて、出るか」 結「そうですか。では、さような…ひゃ!」 隣の人は私を抱き上げると、そのままバーを飛び越えて踏切から出た この人…勝手に現れて勝手なことをして…! 結「何をするんですか!」 ?「ん?もしかして、自殺志願者…なわけないか。足が震えてるしな」 結「足が震えてる?何をバカな…」 指摘されてようやくわかった いつの間にか足が震えてる… 結「わ、私は…」 ?「…半端な覚悟で死のうとするなよ」 結「半端なって、何を根拠に…!」 ?「遺書…それまだいい。恨み辛みを綴るにはうってつけだ。だが…」 男の人は遺書を取り出して広げた ?「文字を見るからに、日を分けてこれを書いている。どうしてそんなに準備期間が必要なんだ?時間をかければかけるほど見つかる可能性が高くなるってのにさ」 結「そ、それは…」 ?「あと、時間と場所だ。この踏切はそれなりに利用する人がいるのは知ってるだろ?特に、平日とはいえこの時間は大抵誰かが通りかかる。俺みたいな暇人がな」 結「私…」 ?「止めてほしかったんじゃないのか?誰かにさ」 結「…」 ?「こんな暇人でよければ相談にのるぞ?」 そう言いながら私の遺書を手渡してきた この時から私の人生は変わったんだと思う 結「あの、名前を聞いても…?」 ?「俺か?俺は…」 この人と出会って私は…
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