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いつから君と一緒にいるんだろう。
そう思うくらい、君と一緒に過ごしている。
ー…。
「ねぇ。」
「何?」
君はずっと、携帯電話の画面とにらめっこしてる。
あたし、ここにいるのに…。見てないよね…。
「んー…。好き?」
「好きだよ」
「アリガト」
「ん、好き」
「ん、そか、」
なら、目を見てよ。
目の前にいるんだからさ、ねぇ…。
会話が途切れた。
間があくのが、嫌いなあたしは、また訊いてみる。
「ねぇ。好き?」
「好きだよ」
ーお、今度は目を見た。
「なんで聞くの」
「…ん、なんでって…。そりゃ、」
間がもたないから、あと、少し、不安だからー…なんて云えない。
「聞きたいから」
「ふぅん。そっか」
小首を傾げてから、すっと視線をまた携帯電話の画面に戻す。
それの繰り返し。
コーヒーショップで、ふたりで、デートっぽいことしてるのに。
君は携帯電話の虜?
カチカチカチカチー。
カチカチ…。
なんか話さないと。
「なに考えてんの」
「んー、小説の続き」
「なんかいいの浮かんだ?」
「うん。あのね、」
携帯電話から、手を離してあたしを見る君。
嬉しそうに話す、小説の話。
君が、今、ハマってるのは小説を書くこと。
それも推理小説を携帯電話で。
だから、今、君の頭の中は《あたし》じゃなくて、《小説》の事。
大事だもんね、わかってる。
でもさあ、
「それでね、今度は、モデルになって欲しいんだ」
「え?」
「だから、小説のモデル。ヒロインになってよ」
「いいの?」
「うん」
「いいよ」
「良かった。ありがとう」
「ううん」
ありがとう、か…。
お礼は君に云わなきゃかな。
好きになってくれてありがとう…。
今はまだ云わないけど。
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