Step 1

10/16
前へ
/205ページ
次へ
「……あれ? また倉木か」 声で倉木だと分かっていたが、パンを片手に給水タンクの影から顔を覗かせ、敢えてそう言った。 荒い息を吐き、疲れた顔で見上げてくる倉木は何だかヨレヨレだ。 休み時間の度にこれじゃあ本当に堪らないだろう。 それに――。 「倉木、昼飯食ってないんじゃないの?」 「……え?」 そう。 コイツは絶対に昼飯食ってないと思うんだよね。 どう考えても逃げるのに忙しくてそんな暇は無いだろうし。 「ホレ」 あっけにとられる倉木に差し出したのは、何とも乙女チックなメロンパン。 俺の好物で、メチャメチャ旨い店のとっておきだ。 「あ、いや……」 「甘いの苦手?」 首を傾げてみせると、倉木は首を横に振る。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加