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「……あれ? また倉木か」
声で倉木だと分かっていたが、パンを片手に給水タンクの影から顔を覗かせ、敢えてそう言った。
荒い息を吐き、疲れた顔で見上げてくる倉木は何だかヨレヨレだ。
休み時間の度にこれじゃあ本当に堪らないだろう。
それに――。
「倉木、昼飯食ってないんじゃないの?」
「……え?」
そう。
コイツは絶対に昼飯食ってないと思うんだよね。
どう考えても逃げるのに忙しくてそんな暇は無いだろうし。
「ホレ」
あっけにとられる倉木に差し出したのは、何とも乙女チックなメロンパン。
俺の好物で、メチャメチャ旨い店のとっておきだ。
「あ、いや……」
「甘いの苦手?」
首を傾げてみせると、倉木は首を横に振る。
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