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店が建ち並ぶ大通りではなく、住宅地とも離れた静かな小道へと足を向けた。
麗らかな日差しの中、手を繋ぎ、歩く。
サクサクと雪を踏み締める音が、耳に心地好い。
「お天気いいね」
「ああ」
「私ね、京介がいつも傍に居てくれて凄く幸せ」
圭の手を握る力を強めて、俺も同じだと応える。
圭は、微かに顔を上向けて俺に微笑んだ。
そして顔を正面に戻すと、遠く前を見詰めながら唐突に話し出す。
「……でもね? こうしていられるのは当たり前の事じゃないんだなって、思った。明日、京介が急に居なくなっちゃう可能性だって……あるんだよね……」
話す声は段々と小さくなり、やがて圭は立ち止まってしまった。
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