Step 10

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「別れは辛いし悲しい。そう思う感情に理屈は無い。でも、その感情は、その者を愛し、共に過ごした時間が幸せだったからこそ抱くんだ。辛く悲しい気持ちも、その人を肯定する、その人を思う気持ちの一部なんだぞ? なのに、不安に溺れて、臆病になって……未来を否定してしまうのは、余りにも寂しい事だと思わないか? そんなにも失う事を恐れるのなら、極論、1人で居るしかない。お前を愛する者が居るのに、その者に背を向けて。愛し愛されて、触れ合い、感情を分かち合う事も出来ない……初めから俺の居ない、出会わない人生を、お前は望むか? 俺は……お前を失う事を恐れるよりも、お前に出会わない事を恐れる」 キツ……考えた事はあるけど、口にするとマジ洒落にならないな。 圭が居ない人生なんて、想像しただけでも寒気がする。 永遠に生き続けられる人なんて居ないんだし、人生には元々タイムリミットがあるんだ。 だから全力で生きる。 突然命の灯火を吹き消されても、なるべく後悔しない為に。 「慎一郎さんだって、思い出して泣かれるよりも、一緒に過ごした時間の中で、嬉しかった事や楽しかった事を思い出して、笑ってくれる事を望んでると思うぞ? でないと、命懸けでお前を助けた意味が無いじゃないか。それに――お前が泣く事は、どうしてもお前を守りたかった慎一郎さんの思いを否定する事にもなる」 コツンと額を合わせ、「お前はどう思う?」と問い掛ける。
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